聴くだけ人間として、現在まで徹底的に音楽受身人生を送ってきました。楽器経験は小学校時代の縦笛とハーモニカくらいです。音楽を、それも生ではなくレコードで聴くことだけに全精力を費やすとなると、再生装置に気を使うのは必然でしょうが、オーディオ装置というものがあることに気づいたのは高校生になってからのこと。それまではとりあえず家にある装置がすべてでした。

 父の仕事の関係で、私が小学校5年に上がる時(昭和37〈1962〉年春)、北関東の小都市から大阪の近郊都市へと引っ越すことになりました。そのとき父の仕事仲間から餞別にステレオ電蓄が贈られました。メーカーは日本コロムビアです。それまではポータブル電蓄をラジオのスピーカーに繋げて聞いていたのですが、ここで初めてステレオというものを耳にしました。ネットで検索すると、このときいただいたのはコロムビアのSSA-551だということがわかりました。http://yonedenblog.blog.fc2.com/blog-entry-253.html ←この写真にあるドアのノッカーみたいな金具に見覚えがあります。当時の売れっ子漫才師コロムビアトップ・ライトによるでモンストレーションLPが付いていました。それまで10インチのSP盤までしか知らなかった私には、この30センチLPがとても大きく感じられました。そのLPには、トップ・ライトが声や足音で左右に動くさま、ピンポン球がラケットに弾かれ右に左に動くさま、小田急のロマンスカーのオルゴールの警笛が近づいて遠ざかるさまなどがステレオの見本として録音されていました。

 カートリッジはセラミック式で、スピードは16・33・45・78回転の4スピード。16回転というのは市販レコードにはなかったので聞いたことはありませんでしたが、78回転のSPレコードは
まだ家にかなりあったので、ときどき父が東海林太郎や鶴田浩二などを聞いていました。受信機として中波+短波の受信機が2台搭載され、当時行われていたNHK第1と第2放送の同時受信によるステレオ試験放送が聞けるようになっていました。放送時間が限られていたので私は実際に聞いた記憶はありません。このステレオ電蓄SSA-551は「エコー方式」を謳い文句にしていて、再生音にエコーがかかるようになっていました。のちに壊れてしまって分解してみたらスピーカーボックスにコードを内蔵した金属製の箱みたいなものがバネで中吊りになっていて、スピーカーの振動でエコーがかかるという仕組みだったようです。もちろんそんな装置でまともな音が出るわけもなく、このエコー装置はいつもoffにして聞いていました。

 このコロムビアSSA-551により、
私はマーチを聞き始め、以後、昭和47(1972)年に至るまでの10年間、SSA-551は我が家のオーディオ再生装置の主役として活躍します。

 写真は当時、それこそ磨り減るくらい聞いた17センチ盤のレコードです。
17センチ盤